サマータイムマシン・ブルース2005』のDVDが届いたので観賞。劇団ヨーロッパ企画の演劇作品で、2005年に映画版が公開されたのに合わせて再演された物。
私はちょうど3年前の2006年夏に映画版のネットでのレビューを読み、コレクターズエディションを衝動買いした次第です。で、毎年夏が来る度に繰り返し観ている訳なのですが、このBOXには演劇版も収納できる様になっているのですな。Amazonほしい物リストに2年以上も入れたまま放置していたのでしたが、今回ようやっとポチりました。これでBOXの収まりも良くなりました。


物語はこんな感じ。夏休み、某大学のSF研究会の部室。ある騒ぎがきっかけでクーラーのリモコンが壊れる。暑さに耐える中、部室に置かれた謎の機械をいじり始める部員たち。それは本物のタイムマシンだった。そして気付く。昨日に戻って、壊れる前のリモコンを持ってくればいいじゃん。簡単なはずだった。しかし、タイムパラドックスを軽視していた部員たちの行動で事態は混乱していく…


演劇版は、舞台が部室固定という事もあって、セリフが多い、動きが大きい。矢継ぎ早に展開して観客を飽きさせずにグイグイと引っ張っていく魅力がある。舞台という制約があるからこそのキャラ構成であり、物語の設定だという事が理解できる。
また、映画と違って全てがリアルタイム進行であるため、カットや編集が出来ない状況で上手に昨日と今日の人物を交差させる演出は感心する。舞台つまり部室の外を利用した演出もしかり。映画版とは異なる切り口で楽しめる作品だったので、私は十分に満足できた。


で、続けて映画版も改めて観賞。こちらは演劇版から2人が同じキャラで続投。残りのキャストは瑛太上野樹里真木よう子などに変更されている。監督は『踊る大捜査線』などの本広克行で、私は個人的には高い評価をしていない人なんだけど、この作品だけは別格。
舞台を香川県内に設定し、演劇版ではセリフの中でしか出てこなかった銭湯や映画館を始め、ゆるい田舎っぷりが存分に描写されている。ゆらゆらとした画面エフェクトも加え、グダグダな夏休み感が溢れている。演劇版では判別できない様な小道具の描写や、分割カットを活かした演出、あるキャラの書いたラクガキの横に別のキャラを登場させて意味を持たせる等、随所に映画ならではの工夫が発見できる。


時間旅行物は、そのジャンルなだけで一定以上の面白さは備えている。基本的にはアイデア勝負だし、それ一作で完結しているならば、オチも満足できるレベルには着地する。過去、現在、未来での事象のシンクロや、タイムパラドックス、それらをどれだけの数、整合性を維持したまま盛り込めるか。勢いに任せてどれだけ説得力を持たせるか。作品の質はそこにかかっている。
この作品は、元の演劇版のシナリオが秀逸という事に尽きるんだけど、おバカなノリと細かい伏線を丁寧に積み重ねていく事によって、かなり楽しい作品に仕上がっている。
難を言えば、初見の人にとっては、タイムマシンが登場して物語が動き始めるまでの最初の30分は、とても退屈に感じてしまうかもしれない。でも、実はそこまでのシーンの画面の隅々に、伏線が堂々と描写されまくっているのですよ。そのため、物語や展開を全て知った後での2度目の観賞は、伏線と細部の描写の確認目的で、とても楽しめると思います。
演劇版からの流れなのでしかたないのですが、一部のキャラがオーバーリアクションでテンション高めなので、そのノリに付いていけない人には厳しいかもしれないですね。


私はとにかく好きな作品です。毎年、夏になったら観たくなります。
とても夏向きの映画なので、クーラーをギンギンに効かした部屋で、コーラでもガブ飲みしながら、だらーっと観るのをオススメします。
あ、くれぐれもクーラーのリモコンにコーラをこぼさないように。