「96時間」


早速、公開初日初回で観てきました。
製作・脚本でリュック・ベッソン。監督のピエール・モレルはリュックの元で撮影監督として経験を積み、『アルティメット』で監督デビューした人。
主演はリーアム・ニーソン。一般的に知名度がある役は『シンドラーのリスト』のシンドラーか、『スターウォーズEP1』のクワイ=ガン・ジンかな。別れた奥さん役で『X-メン』のジーン・グレイ役のファムケ・ヤンセンが出ています。


物語はこんな感じ。元CIA工作員のブライアン・ミルズは娘のキムを溺愛している。娘の誕生日パーティのために任務を放棄して勝手に帰国してしまい、アラスカに左遷させられる程。愛想を尽かした奥さんは彼と別れ、娘を連れて資産家と再婚してしまう。ブライアンは仕事を辞め、娘を陰ながら見守るため、同じ街で引退生活。
17歳になったキムは、友達のアマンダと一緒にパリに旅行に行く予定。未成年のため、実の親の同意が必要なのだと。渋るブライアンだったが、専用の携帯を渡し、毎日電話を入れる事を条件に許諾する。
ところが、ブライアンの心配は現実となる。二人の警戒心の無い行動から、人身売買組織に目を付けられていたのだ。ブライアンとの通話中、組織の襲撃を受け誘拐されるキムとアマンダ。
録音した通話を元に、経験と人脈を活用して行動を開始するブライアン。元同僚の言葉によれば、タイムリミットは事件発生から96時間。それを越えると救出は絶望的だと…。


このあらすじを読んで、たぶん誰もが思う事。「スティーブン・セガールの作品に似たの無かったっけ?」
とにかく、意外性も無く一直線に展開していく作品。だから、やっぱり見所はブライアンの魅力だよなぁ。
誘拐目前の娘への言葉。「お前は誘拐される。だが必ず助ける。携帯を床に置いて奴らの声を聞かせろ。そして襲われる数秒間で、犯人の特徴を出来るだけ教えるんだ」という感じ。この音声データを取っ掛かりにして犯人たちを追いつめて行く。
そして、ブライアンの行動からは、彼の現役時代は綺麗事だけじゃなく、任務に必要なら汚れ仕事も数多くこなしてきた事が想像できる。娘を助けるためならフランスの法律なんか知るかと。時間が無いんだと。一般市民の命さえ交渉の材料にするぞと。
格闘シーンでも、余計なジャブや牽制なんか使わない。集団を相手にする時は多少の時間が必要だけど、一対一なら瞬殺。終盤の一人を除いてはほぼ無敵。鬼がいるよ。
『トランスポーター』のフランクの殺陣が、ダンスを思わせる様なカンフー演舞っぽかったのと比較して、こちらは殺傷作業。料理人が生きた魚や鶏を効率良く捌いていく感じ。
殴る音、腕や首の骨を折る音、それから銃撃音も含めて、どれも重く響いてくる音だった。その辺の影響もあってか、映像自体はそれ程には残虐描写をしている訳でも無いのに、やたらと痛く感じた。そこが、観ていて満足感の残る理由だったのかと思う。
それから、誘拐してきた女たちを麻薬漬けにして売春させるっていう描写は、かなり嫌な映像だった。その辺りがPG12の理由かな。


原題は『TAKEN』。それが邦題では『96時間』に。ある程度物語が進むと、最初に提示されたタイムリミットが意味を成さなくなってしまうので、作品のタイトルとしては違和感がある。そしたら、FOXジャパンの広報は「ジャック・バウアーの24時間に対して、こちらは4倍の96時間!」とか意味不明のアピールしてんのね。上映時間、93分だし。
そうそう、日本では今日から公開なんだけど、パンフでは2008年、エンドロールでは2007年の表記でした。やっぱりリーアム・ニーソンじゃ日本で収益が期待できないか。アメリカで圧倒的なヒットを飛ばして、ようやく日本に来たと。『スラムドッグ』や『ホット・ファズ』もそうだけど、どうして後手に回っちゃうかね。他の評価に頼らず、面白い作品を自力で買い付けて欲しいよね、日本の配給会社も。


さて、私の評価ですが。10点満点で8点。先週の『トランスポーター3』より上です。上映時間も短めですので、難しい事も考えず、楽しめる作品。マイナス要素は、主人公が強すぎる点かな。強すぎて、ピンチらしいピンチがほとんど無かったですから。
あと、実の娘だから可愛いし、無事に救出したいのでしょうが、第三者的目線で見れば、事件に巻き込まれたのは自業自得。同乗の余地は無いですな。ティーンの女の子二人きりで海外に出かけて、警戒心のカケラも無いのがどうかしてる。