「ウルヴァリン X-MEN ZERO」


例の如く、公開初日の朝一で観に行ってきました。
もちろん、この作品は映画版『X-MEN』3部作からのスピンオフ。主役のウルヴァリンを演じるのは今まで通りにヒュー・ジャックマン。物語は『X-MEN』よりも過去の話で、所謂ウルヴァリン「誕生編」。

150年前、少年時代のローガン(ウルヴァリン)はミュータントの力を隠して生きるため、兄のビクター(後のセイバートゥース)と逃亡生活を始める。驚異的な肉体再生能力と、老化抑制能力を持った彼らは数々の戦争に参加してきた。だが、次第に凶暴性を増していくビクター。ベトナム戦争で暴走した兄をかばうローガン。二人は反逆の罪で銃殺刑に処されるが、生命を失う事は無かった。そんな彼らに注目したのが、ミュータントによる特殊部隊「チームX」を指揮するストライカー大佐。自分たちの能力を国のために使う。二人は「チームX」に参加する。与えられた任務をこなす中で、ローガンは部隊の非人道的な性質に抵抗を感じ、任務を放棄する。
6年後、カナダで恋人のケイラと平凡に暮らしていたローガンの元に、ストライカーが現われる。「チームX」を離脱したビクターが、かつての仲間たちを殺して回っているのだと。そしてローガンは、望んでいなかった血と暴力の世界に再び巻き込まれるのだ…。


こんな感じですかね。これ以上は、ちょっとネタバレの領域に入ってしまうので。パンフにも、もっと後の方までの展開が記載されてしまっているので、上映前には観ない方が吉です。
本来『X-MEN』のシリーズは、ミュータントとノーマルとの疎外感、迫害と差別と反乱というテーマが通してあったのですが、今作ではそれらはほとんど影を潜めてます。ウルヴァリン自身が普通人との関わりの中で、自分の能力を制御する事に苦しんでいたり、敵組織によってミュータントたちが実験研究のために拉致監禁されている描写があるくらいですかね。
そうした色合いよりも、ウルヴァリンを素直にヒーローとして描き、ミュータント同士のバトルを、時に痛々しく、時に残酷に、時にコミカルに、時にケレン味たっぷりに描いた作品だと言えるでしょう。
異常な能力を持って生まれ、悪に改造され、利用される前に脱走し、追っ手を撃退し、自分と同じ能力を持ったライバルと戦い、キザでニヒル系な仲間と出会い、そして圧倒的な能力を持つ最強怪人とのラストバトル。完全に日本の特撮ヒーローじゃないですか。


ミュータントたちもなかなか見応えのあるキャラが揃ってます。
セイバートゥースは、『X-MEN』1作目に出てきた時はそれ程印象の残るキャラ描写はされてなかったと思いますが、今回はウルヴァリンと兄弟に設定を改変しての登場。単純な暴力キャラというだけでなく、存在感のあるアレンジが為されていたと思います。
ガンビットはカッケー。いや、ストーリー上は単なる賑やかし程度の役割でしかないんだけどね。カプコンの格ゲーでも人気あったし、『るろうに剣心』でも某キャラと某キャラにデザイン元ネタになってたり、日本では結構な知名度がありますよね。公開前からの期待値は出してくれたので満足です。
ゼロやデッドプールは惜しいですね。作品の都合上、一人のキャラに多くの尺を割けないのは仕方ないですけどね。デッドプールが乱れ飛ぶ銃弾を剣で弾き返すシーンは、もう少し丁寧な描写にしてほしかったところ。『スターウォーズ』のライトセイバーの様に、銃弾の軌跡をきっちり見せて、説得力を持たせた方が良かったなと。
それからスコットかな。後のサイクロップス。若い彼が出て、それなりに活躍してます。
あと、パンフにはストームもいたって記載されているんだけど、私は見逃した。黒人少女はいたけど、その中に白髪の娘がいたかなぁ…
そして…。これは秘密にしておこう。終盤で、シリーズでおなじみの、あるキャラが登場します。シリーズ作品と同じ配役なのは、そのキャラとウルヴァリンの二人だけ。登場が後ろ姿だったから、雰囲気を匂わせるだけでお茶をにごすと思ってたので、正面から顔のアップが来た時はうれしかったですよ。


評価は10点満点で7.5かな。8までは一歩及ばずって感じ。上にも書いた様に、シリーズの他の作品とは方向性が違ってます。だからファンでも微妙に感じるかも。それでも『2』と同じくらいには楽しめましたし、『3』よりは上だと思いました。
まぁ、今までのシリーズを観てないで、いきなりこの作品を観る人も少ないとは思いますが。出来れば『1』&『2』は観ておいた方が、リンクが楽しめるんじゃないかな。
それから、女の子的な華は少なめなので、その辺は期待しないように。


しかし…。この邦題の『ZERO』ってセンス、何とかならなかったのかね。原題は『X-MEN ORIGINS:WOLVERINE』。『オリジンズ』でもいいと思うし。それこそ『ウルヴァリン』だけでも問題無いと思うけど。
『ZERO』なんて付けると、途端にパチモン臭ただようタイトルになっちゃう。『SAU ZERO』『CUBE ZERO』『ALIEN ZERO』…ね? オリジナルとは全く関係ない、日本で勝手に便乗タイトル付けちゃいました、騙されて借りてくれたらラッキー!ってな感じでレンタル店の棚に並んでる。そんな感じでしょ。ダサいったらありゃしない。


そうそう、少し前にディズニーによるマーベル買収のニュースがありました。
ディズニーって、バイオレンスな作風を嫌うイメージがあるけど、大丈夫かね?
スピンオフ作品として『ウルヴァリン2』、『マグニートー』、『デッドプール』、『X-MEN:First Class』。『キャプテンアメリカ』を筆頭に『アヴェンジャーズ』連作と。結構な予定があるんですけど。聞いた噂では(ソース無し)、撮影まで進んでいる『アイアンマン2』以外は企画が白紙から再検討って。いや、信じたくないけどね。
まぁ、『ウルヴァリン2』は日本も舞台になるとかで、今回の公開に合わせてスタッフが来日して、ロケ調査も行ったという話もありますし。『X-MEN』サイドの作品は順調に量産されるのかも。今作も、次作に引っ張りそうなネタ振りをちらせてましたし。『アベンジャーズ』の方は、サミュエル・L・ジャクソンともめたって話も聞くし、こちらは難航しそうか。


あ、今作もエンドロールの後に短いEND映像が流れますので、最後まで席を立たないでいましょう。