「曲がれ!スプーン」


この日の日記でレビューした『サマータイムマシン・ブルース』(以下『STMB』)。そのスタッフが再結集して撮られた作品が『曲がれ!スプーン』です。
という訳で、早速観てきました。


長澤まさみ演じる桜井米は、超常現象バラエティ番組「あすなろサイキック」のAD。幼い頃の経験をきっかけに超常現象ビリーバーとなるが、現実は彼女に微笑んではくれない。視聴者からの投稿をディレクターから渡され、自分の手で本物をカメラに撮るため、全国行脚の旅に出る。
一方、某所にある喫茶店「カフェ・ド・念力」。ここは本物のエスパーが集う場所。普段は能力を隠し、普通の人として生活している彼らだが、年に一度のクリスマスイブには、「カフェ・ド・念力」を貸切にして「エスパー・パーティー」を開くのだった。
今年は、喫茶店のマスターが「強力な新人を招いた」と話す。そのマスターが用事のため店を留守にしている間に、怪しい男、が来店する。エスパーたちは、彼こそが新人だと思い込み、彼に自慢の超能力を披露する。だが、彼は超能力ではなく、ビックリ人間「細男」だった。ミスに気付いたエスパーたちは、彼の口を封じる方法をアレコレと考えるが…。
さらに現われた来客。それは「細男」と取材の待ち合わせをしていた桜井米だった。
マスコミに自分たちの事がバレては困るエスパーたち。どうする?…という話。


こちらの作品も『STMB』と同じで元はヨーロッパ企画の舞台作品。脇役には有名な役者さんが何人も出ていますが、集客につながりそうなのは長澤まさみだけ。メインとも言えるエスパーたちはアチコチの劇団の役者さんばかり。とても地味な絵面です。その中で「透視」と「サイコキネシス」の人は舞台版『STMB』にも出演されている人でした。まぁ、この二人ばかりでなく、瑛太上野樹里真木よう子の3人を除いては、舞台版&劇場版『STMB』のメインキャストは何らかの役柄で全員出ているんじゃないかと思います。それから升毅さんも、イロイロな場所で顔を見せてますので、今回も「神サマ」役というポジションなんでしょう。
「カフェ・ド・念力」のある街が、『STMB』と同じロケ地でして、商店街も寺も同じ場所。「UFO街灯」も演出上で使われています。騒ぎを起こした銭湯、映像特典で収録された「カタパン屋」、さらに「SF研会」の部室が光ったり、商店街にギンギンがいたり、カッパの看板があったりと、『STMB』を観た人なら判別できる小ネタがちりばめられていました。


しかし。そうした『STMB』リンクを取っ払うと、作品としてどうなのか?
私自身、観賞中に何度も笑いましたけど、一本の映画作品として観た時に微妙です。良かったと思えるのが「カフェ・ド・念力」で繰り広げられるドタバタ会話劇ですし。おそらくここは元の舞台版準拠で何度も練り込まれてある脚本なのでしょう。それ以外のシーンが何だか蛇足感が漂っていて、たぶん舞台版を観た方が面白いんじゃないかなぁと思いましたよ。
最後にちょっと温かくなるハートフルな締めは良いと思うのですが、そこに取って付けた様に「アレ」を出してきて、それを見上げる子供たちの表情を止め絵で連続で見せて。それであれですか? 「信じる気持ちをいつまでも忘れないでほしい」ってメッセージですか? そういうのは不要だと思う。この本広克行監督って、私は高く評価していないって『STMB』レビューの時も書きましたけど、監督の悪い部分が色濃く出ちゃってると思う。
あまり人にオススメできる作品じゃ無いなぁ。
私としては10点評価で6点、しかも『STMB』リンクを楽しめた分を上乗せした点数。
エスパーたちはホントに良かった。「カフェ・ド・念力」の中の完成度を、外の世界の描写で足引っ張っちゃった感じ。