「ウルフマン」


はい、観てきました。今週を逃すと上映回数がガタッと減って、観るタイミングが合わせずらくなるので慌てて。
で、日曜の18時半の上映で観客は私たった一人。人生で初の貸切です。


物語の舞台は1891年イギリスのブラックムーア。舞台俳優のローレンスは、兄の婚約者から手紙を受け取り、故郷のブラックムーアへ25年振りに戻ってきた。行方不明の兄を探すつもりだったローレンスは、しかし到着したとたんに兄の遺体発見を知らされる。
兄の遺留品のメダルを手がかりに、ジプシーの集落を訪れたローレンス。だが、その時。集落が襲われる。獣の様な人の様な謎の存在に。集落で暴れ回り森へと逃亡する襲撃者を追跡するローレンスだったが、反撃を受け、瀕死の重傷を負う。異常な回復を見せたローレンスの身体。ロンドンから捜査に派遣されたアバライン警部と、村人たちは、ローレンスに疑いの目を向ける。ローレンスに起こった変化とは? そして、再び満月の夜を迎える…


主役のローレンスはベニチオ・デル・トロ。彼自身、製作にも関わっています。ローレンスの父はアンソニー・ホプキンス。もうね、この二人のからみだけで圧倒的な存在感と迫力を味わえます。ホント、素晴らしい。それから舞台背景。『シャーロック・ホームズ』と比較するとロンドンの描写は少なめなんですが、それでも雰囲気が良い。これにメインをダニー・エルフマンが担当した音楽が重ねられて。役者の演技と舞台、それを堪能するだけでチケット代は元を取った気分です。
ストーリー自体は古典作品のリメイクですので、意外な展開も無く、想像した通りの流れで結末を迎えます。
狼男のデザインも古典へのリスペクトやオマージュの意味合いが大きいのでしょうが、狼のシルエットラインを基本にしたデザインでは無く、昔のノッペリとした顔のタイプ。体格自体が良い事もあり、一見してゴリラ男に見えてしまう。この点は一般観客にはマイナスなイメージが残るんじゃないかな。ラストバトルも『サンダ対ガイラ』風に感じてしまうし。
それから、何かある度に音で驚かせようという演出を繰り返すのは気になった。これも昔風なんでしょうが。
グロ描写もそれなりに多かったですね。
肝心の狼男が暴れるシーンは、ロンドンやラストよりもジプシー集落の時が一番良かった。これは狼男の姿や顔がハッキリと見えていないために迫力が増したのかな。逆を言えば、姿がハッキリと分かってからは怖さと驚きが薄れてしまったと。
繰り返しになるけど、狼男はもう少しスマートで精悍な感じの方が良かったかも。狼のイメージとのギャップを感じてしまう。ベニチオ・デル・トロアンソニー・ホプキンスも以前に比べて肉が付いた体型だから、まあ合ってはいるのだけど。以前のデル・トロだったらアダルト犬神明みたいな雰囲気が出ていたかもしれませんね。


人を選ぶ作品で(毎回同じ事を書いてる気がしますが…)、古典のリメイクだという部分が受け入れられない人では評価がガクンと下がると思います。それから主演二人の存在感を楽しめないと厳しいだろうなと思います。
10点満点評価で7点。総合評価ではこちらの方が下ですが、俳優がどうの、原作がどうの、雰囲気がどうのと言ったブーストを上乗せしなければ、根本的な部分での作品評価は『アリス』より『ウルフマン』の方が面白かったと思いました。


蛇足。ローレンスとアバライン警部の会話で。警部がローレンスに狼男の事を尋ねる所。質問に質問で応える形で「切り裂きジャック」の事を警部に尋ねます。で、警部の微妙な表情。映画の中では回収されていないので伏線にもなってませんが、これって…? ロンドンの精神病院の医師がジャックという名前だったので、こいつが殺人鬼だと思うのですが、映画の中盤でお亡くなりに。で、ラストで警部にちょっとした展開があるので、それがこの後の「切り裂きジャック」事件に繋がっていくのかなと。