「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2010」


えー、地元の川口市で開催されている映画祭です。公式サイトはこちら
今年で7回目になるそうですが、なかなか足が伸びず、初めて観賞したのは昨年から。
チョロッと調べてみたら、昨年のブログには感想書いていなかったですね。昨年は3作品の観賞でした。
今年は開催前にフリーパスを購入。時間の調整できる限り観賞しようと決めてました。


長編部門コンペは「劇場公開用長編映画の製作数が3本以下の監督による、デジタルで撮影・編集された70分以上の長編作品」が対象。85カ国648本の応募の内、13作品がノミネートされました。
以下、ここまで私が観賞した作品の途中報告。


『マジックシルバー』2009年、ノルウェー作品。カタリーナ・ラウニング、ローアル・ユートハウグ監督。
青の山で「魔法の銀」を守る青の妖精。病気の父王を救うため、人間界に降りていく姫。それがきっかけとなり、世界が闇に覆われてしまう。そこで姫は再び人間界へ…。という話。良質のファンタジー。ハリウッド大作と比べると見劣りするかもしれないが、人間社会への風刺も効いていて、キャラも魅力的で、とても楽しめた。ノルウェー映画なんて観る機会もそう無いので新鮮。


『ニュースメーカーズ』2009年、ロシア作品。アンダシュ・バンケ監督。
ジョニー・トー監督の『ブレイキング・ニュース』のリメイク作品との事。武装強盗団によって信頼が失墜してしまった警察が、マスコミを利用し、強盗団逮捕の瞬間をライブ中継して信頼を回復しようと試みる。ところが犯人たちを追跡していたスミルノフ少佐のチームと強盗団との銃撃が始まり、犯人たちは人質をとって籠城。警察の計画は狂い始めてしまう…という話。
この作品はとても好みでした。元になった作品も観ていないので、そちらと比較すると評価は変わってしまうのかもしれませんけど。
銃撃などアクション関係はかなり良かったです。犯人たちと人質との交流シーンも人間的な面が出ていて良かった。警察を指揮するカティア広報官は人の命よりショーを成功させる事を優先していたキャラなのですが、最後に自身が危険にさらされる、その時の表情の変化なんてのも印象的でしたね。で、この作品、既に国内でDVDリリースされているんですね。


『透析』2009年、中国作品。リウ・ジエ監督。
実話を元にした作品。1997年、開放政策半ばの中国。自動車2台を盗んだ事で死刑判決を受ける被告。その判決は数十年前に定められた刑法による物で、現時点での貨幣基準とはズレがあった。やがて、被告の腎臓はある企業の社長に臓器提供される事となる。ところが死刑執行が決まったと同じ時期、法の改正が成った。改正後の法では死刑とはならない。だが判決は改正前。死刑を執行させようとする、社長側。そして執行の日を迎え裁判長は…という話。
なかなか考えさせる作品でした。臓器のために、裁判所のメンツのために、死刑囚の命が軽んじられる中、主人公の裁判長の心の葛藤が重く響いてくる傑作です。


『やがて来る者』2009年、イタリア作品。ジョルジョ・ディリッティ監督。
1943年冬から44年秋。イタリアの貧しい村に住む少女マルティーナは、生まれたばかりの弟が死んでから、言葉を話す事ができなくなっていた。村は、イタリアに侵攻してきたナチスと戦うパルチザンに協力していた。マルティーナに新しい弟が生まれた頃、ナチスの銃口は村人たちに向けられ虐殺が始まる…という話。
現時点で、私の評価ではこの作品が一番ですね。既にいろいろな国で受賞しているだけに、他の作品と比べても鉄板だったかもしれないですけど。
後半の惨劇も衝撃ではあるのですが、前半の牧歌的情景の中で、村人と交流を持とうとするナチス兵の人間らしさが、後半とのギャップを大きく感じさせてきますね。
観終わって、かなり精神的に来ました。でも、もしDVDなどがリリースされるのであれば是非とも所持していたい作品です。


『闇への一歩』2009年、イラク、トルコ作品。アトゥル・イナッチ監督。
イラク北部。小さな村がアメリカ軍によって襲撃。1人だけ死を免れた少女ジェネットは、キルクークの街にいる兄の元に旅立つ。だが、その兄も爆撃で重傷、トルコに搬送されたと知る。トルコへ向かう途上、テロリストに助けられるジェネット。彼女はイスタンブールで兄の死を聞かされ、やがて自爆テロ要員として育てられる…という話。
こちらもとても重い作品。前半はそれでも、厳しいながら見事な自然風景に目を奪われるが、次第に夜のシーン、暗いシーンの比重が増え、物語もタイトル通り「闇」へ向かっている事を感じる。そしてテロリストによる教育、洗脳。少女の決意と涙。最後に彼女が選択した行動、そしてある事実が明らかになる事で、ようやく観ている側は救われた気持ちになった。
見応えのある作品ではあったが、観ていて辛い気持ちの方が大きかったのが正直なところ。


短編部門コンペは国内の次世代映像クリエイターの発掘が目的。15分以上30分以下の作品が条件。162本の応募作の中から10本がノミネート。


『不幸買います』2009年。泊誠也監督。
不幸を買い取るというDMを見た男が、自分の不幸をねつ造して大金をだまし取ろうとする話。まぁ、『世にも奇妙な物語』風。割とテンポが良くコミカルな作風で気楽に観賞できたが、演出や演技が少しクドい気がした。展開もオチも予想の範囲内で意外性も無く、イマイチだった。


『KARAKURI』2010年。石田肇監督。
エセ和風サイバーな世界観。事故で恋人と片腕を失い、機械の義手を付けた男に、謎の女が襲いかかってくる…という話。
うーん、CGが…。最近のゲーム作品を幾つも見慣れている身としては、CGのクオリティがチャチ。何年前レベルだろうって感じ。殺陣も頑張っている方だとは思うんだけど、例えばマーク武蔵なんかのアクションを数年前に見ているからね。こちらも驚きが無く。ストーリーもオチも独自性が感じられず、何もかも中途半端な印象だった。エンドロールなんかを見ていると、協力している会社名が幾つもあって、素人の同人レベルではなく、半商業作品的。それでこの出来は無いかなぁ。主人公を襲撃する謎の女を水野美紀が演じていたのは驚きでした。


『濡れるのは恋人たちだけではない』2010年。高野徹監督。
ビデオ撮影が好きな大学生が、酔いつぶれて、スナックのお姉さんの部屋に連れていかれる。そこにいたヤクザのジョーに、自分たちの映画を撮る羽目になり、2人に連れられて勝浦へ。カメラ片手に振り回される大学生だが…という話。
コミカルな作風で楽しく観賞できた。何と言っても3人の言葉の掛け合いが良かった。何となく寂しい勝浦の街が、3人の関係性とダブって見えて、物悲しさを感じる。ただ、一部の演出は個人的に好みでは無いし、最後のエンドカットはラストの余韻をブチ壊していると感じたが。


『Kingyo』2009年。エドモンド・楊監督。
秋葉原でメイドのバイトをする女性と、彼女に会いに来た大学教授。2人は秋葉原を歩きながら過去を振り返るという話。川端康成の作品を元にした作品との事です。
金魚を巡って明らかになっていく2人の関係性。画面を左右二分割してそれぞれをカメラが追っていく事で微妙な心理面を表現した演出の妙もあり、とても完成度の高い素晴らしい作品に仕上がっている。
短編の中ではこの作品が群を抜いている。この作品はベネチア国際映画祭にも出品されたとか。監督はマレーシアの人らしいですね。


ここまででも十分にフリーパス代3000円の元は取れてますね。まだまだ今週一杯は上映が続きます。私は残り4作品を観賞する予定です。
中には既に評価されている作品もありますが、なかなか普通の劇場には来ないタイプの作品ばかり集中して観賞できるのは、とても貴重な体験だと思います。まぁ、これも自宅からチャリで10分以内で行ける場所で開催されているからで、遠方からでは連日通うなんて厳しいでしょうけどね。