「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2010」

ってなわけで、この映画祭も無事終了しました。7月31日に寝過ごしてしまって、最終日の上映を観賞できなかったのが残念ではありますが。
観賞した長編作品が9本、798分。短編作品が4本、86分。3000円のフリーパスとしては十分以上に堪能できたと思います。
さて、では前回以降に観賞した作品の紹介を。


テヘラン』2009年、イラン、フランス作品。ナデール・ホマーユン監督。
イブラヒムは身重の妻を残してテヘランに出稼ぎに来ていた。だが、彼の仕事は物乞い。彼は赤ちゃんをレンタルで借り、同情を誘って稼いでいた。ところがある日、お守りをたのんでいた同居人が赤ちゃんを持ち逃げされてしまう。貸主に発覚し、多額の賠償金を要求されるイブラヒム。彼は返済のためヤバい仕事に手を出してしまう…。
中東大都市テヘランの、雑多で闇に包まれた雰囲気がとても良かった。そして、夢を抱いてテヘランにやってきた普通の人々が、街の闇に染まっていき、それでも懸命に生きている様がとても象徴的に描かれている。エンターテインメントとしても一級で、緊張感、圧迫感、意外な展開と爽快感、そして生命力と悲劇。それらが程良く詰まっていて、満足感の高い作品だった。


『seesaw』2010年、日本作品。完山京洪監督。
同棲しているカップル、真琴と伸司。友人の結婚を期に、伸司は真琴との結婚を意識し始めた。ところが真琴は今のままの関係が良いと主張。そんなある日、真琴に妊娠の兆候が現われてしまう。しかし、伸司は…。
シーソーは、対面に相手がいて初めて成り立つ遊具。それをタイトルに冠したこの作品では、真琴は中盤でその相手を失ってしまう。
そこに表現される喪失感は、観ている側の心を激しく打つ。リアルに感じるはずで、演技や表情やセリフなどは出演者のアドリブによって演出していったそうだ。70分という短い尺ながら、とても印象に残った作品。


『けがれなき愛』2009年、韓国作品。シン・ヨンシク監督。
初老のカメラ修理工ヒョンマンは、ガンで死んだ友人から、娘ナムンの世話をたのまれた。ナムンが好意を抱いている事にとまどうヒョンマンだったが、やがて自身もナムンに魅かれていく。
年齢差のある恋愛物語であり、それによるギャップや、あるいは今まで自分の世界に閉じこもってきたヒョンマンが、ナムンによって殻を開いていく、その過程がややコメディタッチで描かれ、かなり良質な作品だなと思いました。楽しかったです。
ヒロインのナムン役イ・ハナ、なかなか可愛くて好みでした。


さて、上映が終わって8月1日に表彰式がありました。まず長編コンペ。私の観賞した限りでは『やがて来る者』が固いだろうなと思っていましたが。
最優秀作品賞:『やがて来る者』
監督賞   :『透析』
脚本賞   :『鉄屑と海と子どもたち』
審査員特別賞:『テヘラン
SKIPシティアワード:『seesaw』
という感じ。重い作品が多いのは、それだけ印象に強く残るんですな。脚本賞の作品だけは観賞していなかったので、少し残念ではあります。どこかで単館上映とかやってくれないものか。フィリピン作品だから難しいかな。
続いて短編コンペ。
最優秀作品賞:『隣人ルサンチマン
奨励賞   :『家族デッキ』
同     :『ゴリラの嘘』
こちら、1本も観てないです。来年は短編の方も多く観る様に心掛けます。


というわけで、とても楽しい映画祭でした。質の高い作品ばかりでしたし、上映後に監督などへのQ&Aセッションが設けられ、映画好きにはたまらないイベントでしたよ。
まぁ、自宅から10分で行ける距離という開催場所でもあり、私自身が夜勤の仕事なため、平日の昼間に参加するのが容易だった事もありますしね。そうでなければなかなかこの密度で観賞できなかったでしょう。
来年も可能な限り参加したいと思います。