「ヒアアフター」


劇場観賞は3月6日で、記事の下書きも震災前でしたが、一部手直しをしてアップします。


フランスの人気キャスター、マリー・ルレはディレクターでもある恋人ディディエと東南アジアにバカンスに来ていた。だが。帰国するその朝、大津波に襲われ九死に一生を得る。その時の臨死体験を本にまとめようとする。
イギリス、少年マーカスは双子の兄ジェイソンを交通事故で失う。薬物依存の母から離され、里親に引き取られる彼は、自らの半身である兄と話したいと願い、霊能者の間を訪ね歩く。
アメリカ、サンフランシスコのジョージは死者と対話できる霊能者。かつてはその能力をビジネスとしていた彼は、その力を嫌悪し、ひっそりと工場労働者として暮らしていた。だが、彼の兄や周囲の人間は彼を平凡な生活に埋もれさせてはくれない。
やがて、「死」に囚われた三人の運命は重なる事になる…。


とにかく撮る作品が例外無く高いクオリティを維持している、「ハズレ無し」のクリント・イーストウッド監督の作品です。
とは言え、この作品は少し毛色が変わっていて、宗教色の少ない死生観を丁寧に淡々と描くという作風で、合わない人にはとことん合わない退屈な作品となりそうです。特に冒頭の大津波が派手でスペクタクル溢れているのに対し、それ以降は作品としてのテンションは控えめ安定ですから。
言葉の意味、視線の動き、指先のちょっとした演技。そうした裏の部分に情報が仕組まれていたんだなぁと後になってからジンワリと来ますね。リピートした方が色々と発見がありそうです。


『グラントリノ』などと比べると内容も取っ付きにくいし、扱っている題材が題材だけに抵抗感もあるかもしれません。
私は少し前に愛猫コロンを失ったばかりなのでナーバスな部分があったのか、泣いてしまいましたね。
10点満点評価で8点。静かな感動を与えてくれる良作です。
が、しかし。現実世界で大津波が日本を襲った後では、冷静に観賞できる作品では無いですね。身近な人の死を体験して、あるいは死を生きのびて、そして何かを考えるための良いとっかかりとなる作品だとは思いますが、今はまだ生々しすぎます。劇場公開も自粛して打ち切りでしょう。タイミングが悪すぎました。私は、観ておくべき作品の一つだと思いました。