ダークナイト ライジング


さて、ちょっと公開すぐにというわけにはいきませんでしたが、8月9日に観てまいりました。
私、ティム・バートンが好きなので、マイケル・キートンバットマンを演じてる版からハマって、ずっとアメコミ系の中ではバットマンが好き派で来てます。とは言っても、コミックスは数える程しか追いかけてませんし、狭くて浅いファンではあるんですが。
で、前作にあたる『ダークナイト』は、私の記憶だと大ゴケした印象があるんですよね。前評判に口コミ、ヒース・レジャーの悲劇なんかの話題性があっても、予想を下回った興行収入だったはず。(あくまで日本の話)確か、「タイトルに『バットマン』って入れなかったから客がその辺をわかってなくて、訴求に弱かったんだろうって言われてたような。その後、ディスクがリリースされてレンタル効果なんかもあって再評価された流れだったと思います。で、今回はその評価を引き継いでの公開で、だからこそ『ダークナイト』って名前は残したんだろうなと。まあ、『ライズ』を『ライジング』にしちゃったりしてますが。


物語は前作の8年後。「英雄」ハーヴィー・デントの功績を讃えて施行されたデント法により、犯罪者たちは刑務所に投獄されてゆく。ゴッサムの街は平穏に包まれていた。少なくとも表面上は。極悪人として追われる身となったバットマンは一度もその姿を表さなくなり、杖を必要とする程にボロボロとなったブルース・ウェインも隠遁生活を続けていた。
ある夜、メイドとしてウェイン邸に潜入した女、セリーナ・カイルにブルースは母の形見のネックレスを盗まれてしまう。その盗難劇にはもう一つの狙いがあった…
同じ頃、警察のゴードン本部長は捜査のため警官隊の陣頭指揮を摂り地下水道に潜入した。そこでテロリスト集団と遭遇したゴードンは瀕死の重傷を負いながらも脱出、しかし重大な秘密を書いた原稿をテロリストのボス、ベインに奪われてしまう…
新米警官ブレイクにゴードンの重傷を伝えられたブルースは密かに見舞いに伺うが、ゴードンは彼に「今こそ力が必要だ…」と訴えるのだった…


まず前提として本作は『ダークナイト・トリロジー』の完結編であるという事。単体で楽しめないとは言いませんが、誕生編である『バットマン・ビギンズ』と前作『ダークナイト』は観ておくべきでしょう。実際に設定、ストーリー、演出と前2作とリンクしている箇所が頻繁に織り込まれています。そうした位置づけで評価するととても素晴らしい作品ですが、単体では『ダークナイト』におよびません。
さて、タイトルにある「ライジング」から連想される様に、まずは地に墜ちたバットマンが復活する物語です。そのため、実は本作の多くの時間でバットマンのヒーローらしさは感じる事はできません。そこに描かれているのは翼をもがれ地面に叩き付けられ、それでも這い上がろうとする男の姿です。
ブルースがもがいている間にもベインによってゴッサムは滅びへのカウントダウンを刻んでいく。その間、本来の主役の代わりに街を守ろうとするのが今回の新キャラのブレイクなわけです。バットマンだけが騎士なのではなく、ゴッサム市民の一人一人の中にも光は宿っている、それは前2作で繰り返し描かれていた事です。ゴードンの言う「力」、それはバットマン一人だけが持っている物では無いんですな。
ベインに関しては単なるパワーキャラにしか感じられませんが、ラスト近くにキャラの裏側が描かれる事になります。それでも前作のジョーカーやトゥーフェイスに比べると印象は弱いですし、最後にこそもっと強力な個性あるヴィランが欲しかった気もします。ただ、監督は人間から逸脱した様なキャラは出したくなかったみたいですからね。
キャットウーマンもちょっと見せ場が弱かった感が。でも思ったよりは良かったかなと。


165分という長尺を飽きさせずに観させる魅力はあります。シリーズ通して鑑賞した人の得られる満足感も十分。ただ、上記した様に単体での評価だと『ダークナイト』には劣ります。そして、この『ライジング』は脚本や演出に粗があり、一部では強引に展開させてしまってる感が拭えません。そして、作劇上、上映開始から数十分と、ラスト数十分以外の部分では溜めに入ってるので、この中盤に耐えられない人には向かない作品ではあります。
個人的にバットマン映画のベストは『リターンズ』である事は今回も揺るぎませんでしたが、この『ダークナイト ライジング』もなかなかどうして心に響いてくる作品でした。


あ、ちなみに、この『ダークナイト・トリロジー』に出てくるバットモービル関係のデザインは好きじゃありません。
それから、スケアクロウ役で今作でもキリアン・マーフィーが出てくるのが嬉しかったです。『ダークナイト』の時は偽物って設定だと思うけど、今回は紛れもなく本物だよな。
最後に。ラストでアルフレッドがカフェで見かける人物。あれは幻だと私は解釈してますけど。あれを現実だとするとラストの意味が全く変わっちゃうじゃない。それは無いよなあ。