フランケンウィニー


観に行ったのは昨年でしたが、レビューが遅れてしまいました。


物語の舞台はアメリカの田舎町。科学好きの少年、ヴィクター・フランケンシュタインにとっての無二の親友は飼い犬のスパーキーだった。不幸な交通事故によってそのスパーキーを失い傷心するヴィクターは、科学の授業中にヒラメキを得る。カエルの死体の筋肉が電流に反応して動く実験を応用し、スパーキーを蘇らせようというのだ。
機材を集め、墓地からスパーキーの遺体を掘り出し、雷雨の夜に蘇生実験を決行するヴィクター。実験は成功し、スパーキーは蘇ったが、それは町に大きな災厄を招くきっかけになってしまう…。


『フランケンウィニー』は元々27分の短編モノクロ作品で、ティム・バートンの2作目です。普通、こうしたパイロット的な短編は経歴の中にカウントされる事も稀だと思うのですが、ティム・バートンの場合はどこの資料を見ても大体は記載されていまして、それだけ重要な作品だったと言えます。タイトルからもわかるようにティムの愛する『フランケンシュタイン』に捧げる熱愛的なオマージュとなっており、さらに後の『シザーハンズ』の原型とも言える作品なのですね。日本でも『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』と劇場で併映された事もあり、『ナイトメアー』のDVDやBDに収録されているので、熱心なティムファンなら視聴した事はあるのではないでしょうか。
ただ、旧作はおそらくディズニーからの制約もあったでしょうし、短い尺の中では描くのに不十分だったでしょう事から、人間のダークな面や、社会からの疎外感といった部分が描写不足だった感は否めません。だからこそ、それが『シザーハンズ』に昇華したとも言えるのですが。
で、今回リメイクされた事による長尺化と描き込み、そして実写からストップモーションアニメ化した事による劇画化。それによって、ティム・バートンの描きたかった作品観がなかなかに良い感じに結実しているのではないでしょうか。
長尺化に伴って、ヴィクターのクラスメートたちを中心に展開が拡がっていくわけですが、このエスカレート具合が良い感じでモンスターパニック映画に化けているわけですね。まあ、ただの犬でしかないスパーキーだけでは町の脅威にはならないわけですし。で、そこでユニバーサル系モンスター映画へのオマージュがいろいろと投入されて、飽きさせないアクセントにもなってますし、ティムが好きな物をぶち込んだ感があってお祭り騒ぎ的な楽しさがありますね。
画面がモノクロなのもティム・バートンらしさを強調してますし、何と言っても音楽がダニー・エルフマンなのも鉄板。『アリス』に『ダーク・シャドウ』とイマイチ乗り切らない作品が続いてましたが、この『フランケンウィニー』でティム・バートンが帰ってきたと感じました。特に、ナソルってキャラ。こういう屈折した破滅的キャラが良い味を出してるなあと。
猫派としては猫ちゃんの扱いにちょっとヘコみましたが、まあね、ティムは犬好きだし、そもそも犬映画ですから。
というわけで、ティム・バートン好き、フランケンシュタイン好きにはたまらない映画でした。
やっぱり、風車小屋よねえ。