「96時間リベンジ」


2008年の前作(日本公開は09年8月)から時間を置いての続編。前作でブライアンが倒した人身売買組織の構成員、その遺族がブライアンへの復讐を誓って彼を狙うという展開。
イスタンブールでの要人警護の仕事を終えたブライアンは、気分転換のためと旅行に誘っていた元妻レノーアと娘キムと合流。異国での休暇を満喫するはずが、レノーアを人質に穫られ一緒に拉致されてしまう。隠し持っていた小型携帯を使い、別行動のキムに連絡をとるが…


前作はDVDを持ってるのにBDで買い直したほど好きな作品でして。まあ、期待はしてたんですよ。
リュック・ベッソン製作脚本系の作品って、1作目はアイディア勝負で印象が良くてもシリーズを重ねる毎に焼き直しの劣化コピーでグダグダになっていく傾向にあると思うのですが、この作品も普通に作ってたらそうなっていたんじゃないかと思うんですよ。
で、前作から大きく変えてきた点が二つ。敵が明確にブライアンをターゲットに先手を打っているために、後手に回ったブライアンがいきなりピンチに陥る事。その結果、ブライアンの行動に制約がかかったため、代わりに娘のキムが行動する事。これはとても良い味付けだと思います。ブライアン自身は工作員として完成されてますから、その行動は基本的に安定しているわけです。前作のレビューで「料理人が食材を処理する感じ」みたいな表現をしたと思いますが、そんな感じ。一方でキムは素人の女の子なわけで、その行動自体はブライアンに指示されてるとは言え、その戸惑いと不安と不慣れなアクションは危なっかしさとコミカルさを演出して、前作での「囚われの姫」でしかなかったキャラから存在感がかなり上がったと言えます。
今作で何がダメだったかと言えば、敵の描写ですかね。冒頭の葬儀シーンなんかももう少し描き様があったと思うんですよ。女子供を出して、彼らにも良き家族としての一面を見せるのなら、それこそ冒頭だけじゃなく襲撃側にも十代の少年なんかを含めて、ブライアン側のキムと対比させるとかね。
それと、敵側の行動がフヌケすぎ。安心しきって背後に気づかないとかね、お前ら何のための見張りであり待機なのかと。ブライアンから逃げてる奴らも、人ごみの混雑とか銃撃での足止めとかを活用しておきながら、簡単にブライアンに追いつかれるし。その辺りの描写にもっと説得力が欲しかったですかね。
まあ、説得力を言い出すと、前作でパリが危険だと言って反対していたのに、もっと危険そうなイスラム圏でキムと別行動で一人放置とかもブライアンの性格からしてあり得んでしょ。その辺りが、物語を動かす方を優先して脚本を練らなかった感が見えちゃってるんですよねえ。


で、次作。たぶんあると思います。今回、敵のボスに他の息子がいる事が言及されてますし、そいつらがさらに復讐の牙を向けるであろう事は明らかに続編を意識した布石でしょう。
もう一つ。今作でキムの恋人が登場して、エンディングでブライアンがしぶしぶカフェでの同席を認めるというシーンがあります。で、彼はイマドキではあるけれどそれほどダメダメな青年描写はされてないんですね。ちゃんとブライアンに挨拶はしますし。このシリーズの根っこはブライアンが娘離れをしていないのが前提なわけで、要はキムを安心して任せられる相手がいるなら物語はそこで終わるわけです。なので、次作はブライアンと彼氏の急造バディ物でどうでしょう。キムがまた事件に巻き込まれて、ブライアンはその救出作戦に彼氏を連れて行くはめになる。その過程で彼氏が急成長。一方でキムの方も自力で状況を打開しようと動くみたいな。リュック・ベッソンならそういうパターンは得意でしょ。まあ、実際はどうあれ、期待しますわ。