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『マザー4』

舞台


また感想記事が遅れてしまい失礼しました。
9月6日、渋谷のギャラリーLE DECOで劇団エリザベス番外公演『マザー4』を観て来ました。
作:k.r.Arryさん、演出:深寅芥さんという舞台ドリームクラブでもおなじみのコンビで、2代目魔璃役の柚木成美さん(なーちゃん)も出演されています。
(余談ですが、この公演を観る直前までマリリンつながりで横浜聖地巡礼してきました。ハッシュタグ「#横浜ラプソディー2014」で連続投下していますので、よろしければご覧いただければと。


物語が展開されるのは基本的にはエレベーターの中。先に3人の女性が乗っているエレベーターの中に1人の女性が乗り込んできて5階で降りる。その短い時間が延々と繰り返しループする事から物語は始まります。
掃除婦の豊澤さん、金髪ヤンキー娘の柚木さん、不思議ちゃん風な服装の関戸さん、そして乗り込んでくるOL風が嶋垣さん。関戸さん以外の3人は役者名がそのまま役名になってますね。
で、時間がループされるわけですが彼女たちにはその記憶が残っていて、異常な状況に気づき、このループから抜け出そうと色々と検証し試し…という展開です。序盤はキャラたちのコミカルなリアクションも目立ってコメディ路線なのかなと。それが各キャラのバックボーンが明らかになり、それぞれが内に抱えてる物がわかってくると作品の印象が一気に変わり、これは運命という呪縛から逃れようともがき、囚われた悲しみという殻を突き破ろうとする物語なんだと気づく。
実はこの4人は血縁で別々の時間軸から集められていました。1985年の豊澤さんの娘が2010年の嶋垣さん、その娘が2035年の柚木さん、そのひ孫が2101年の関戸さん。関戸さんが自分の境遇を変えるためにお婆ちゃんたちを集めて運命の連鎖を断ち切ろうとこの状況を作りだしたという事です。
4人は状況が進む中でお互いの事を知り、自分を見つめ直し、自分の生きてきたこの人生も大切な自分自身であり、その運命をも抱きしめて前を向いて歩こうと、そういう考えに辿り着きます。
過去は変えられないけれど、未来は変えられる。それが次の世代の「過去」を変え、それが別な形で連鎖していく。そんな物語だと私は受け取りました。


物語の性質上、初観時にはネタバレを一切回避してまっさらな状態で観るべき作品ですが、けっこう伏線らしき物も序盤から仕込まれていましたので、それはそれで検証しつつ楽しみたい気もします。いつか再演あればいいですね。
エレベーターの中という状況舞台は大掛かりなセットも不要で低予算で作れますし、登場キャラの人数も限定できますし、それでいて効果的に緊迫感を演出できますから映画などでもいろんな作品が作られているのですよね。
公演が行われた会場もビルの5階で、これも作品とシンクロした感じで良かったです。
エレベーターの階数アナウンスの「5階です」というのがループの度に繰り返されますが、これが一度だけ「5階でした」になりまして、この時の出来事をもう一度観て細かく検証したいんですけどね。で、この差異がずっと気になってて。この「5階」というのは「誤解」との2重の意味を持たせているのではないか?そうすると「誤解」を繰り返して「誤解」に囚われて「誤解」から抜け出ようとする物語なのだなとツイートしましたら、深寅芥さんから「その通りです」とリプをいただきました。


豊澤さんは4人の中でも一番コミカルな描写が多い感じで、体当たりな演技も多かったですね。自分の事よりも他人の事を考えて動くタイプ。だから大切な人を失った時には絶望して自殺をしてしまいますが、他の人と共に状況を変えるためなら率先して飛び込んでいく事ができるんですね。孫に当たる柚木さんとのコンビもよくはまっていて、観ていて楽しく強い印象に残る人でした。
嶋垣さんは一番まともに見えて実は内面に異常性を孕んでいるタイプ。それが少しだけ見えた時はちょっと怖さを感じましたね。そして物語を大きく変えるキーとなり、関戸さんとの掛け合いはとても素晴らしかったです。
関戸さんは一見飄々としていて考えている事が掴めない印象から始まりましたが、後半で自分をさらけ出してくる辺りから魅力に溢れてきましたね。
それぞれが別のタイプによる4人の掛け合い、そして豊澤さんと柚木さん、嶋垣さんと関戸さんというペアで異なった空気を魅せてくる演出は物語にグイグイと引き込む魅力がありました。


さて、やさぐれヤンキー娘の柚木さん。序盤の内はそれこそ刃物の様なギラギラした感じがあって、近づき難い雰囲気を出していたのですが。それが電話をした辺りから変化を見せてきます。電話の内容が、その相手との「別れ」を意味し、それが精神的な拠り所を失う事になるわけです。そこから「もうどうでもいいや」感が出てある行動に出ます。心は空っぽになってしまいましたが、それからしばらくのループでは行動に引っ張られる形になるわけですね。そして他の3人との関係性が明らかになっていき、他者とのつながりを意識して、そして「生きる」という事に真正面から向き合う様に変わって行く。その演技の変化は観ていて見事だと思いました。
そして実際に展開を切り拓いていく役割は豊澤さんの行動が目立っていましたが、要所要所でその起点となる発言をしていったのは柚木さんが多かったと思うのですよね。あの子は境遇からして今までに色々な経験を積んでいるだろうし、学歴とかは関係なくとても頭のいい子なのだと思いましたね。

終演後になーちゃんとお話させていただきました。
ドリクラライブvol.3の時は接客と数曲分のステージだけでマリリンの役作りは存分に発揮されたとは言い難かったのですが、この終演後になーちゃんにお会いして、この人の役作りのレベルはスゴいんだな、舞台女優としてとても才能のある人なんだなと感じました。
さっきまで観ていたヤンキーの柚木さんと、目の前にいる素に戻ったなーちゃんとではもう顔が別人にしか見えませんで、もちろんそれはマリリンの時とも違って。声も柔らかくなって、目も優しくなって、メッチャ可愛いんですよ。思わず某女児向けアニメのキャラみたいですねと言ったら照れまくっちゃって。(そう言えばあのキャラの名前「ミューズ」にも「ゆず」って入ってますね)Twitterではそれなりにからんでもらっていたので、素のなーちゃんがどういうキャラなのかはわかっていましたけどね。
今まで劇団ドリクラのキャストさんを中心に何人かの舞台演技を観てきましたが、なーちゃんが一番スイッチが切り替わって役に入り込むタイプだと思いましたね。
ドリクラを知っている方ならわかると思いますが、マリリンというキャラのセリフやリアクションも、自分の世界を創ってその中に浸っている感じがとても強いので、演じるのってかなり難しいと思うのですよね。でも、なーちゃんならマリリンはしっくり来る適役なんじゃないかと感じました。だから、今のライブという形態はマリリンにはホントにもったいないと思うんですよね。マリリンを中心としたストーリーと、その役作りのこだわりを舞台できっちりと堪能したいですよ。
いや、これは劇団ドリクラに限らずね。他の舞台に出演される時はまた観に行きたいと思いました。

で、31日の下北沢ピカイチに続いて劇団ドリクラの2代目受付さん役の美波友利さんにエンカウント。今回も近くに来ていただくまで全く気づかなくて失礼な事を。いやー、ホントに私って周囲を見ていないんですね(汗)
次の機会こそ先に気づくようにします。