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『Juliet』

舞台 舞台(山下聖良)

山下聖良ちゃんが出演する舞台、劇団空間演人プロデュース「Juliet」A班を両国のエアースタジオで4月27日、30日、5月2日と観てきました。初日、中日、千秋楽です。

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何年も何度も繰り返し上演されている作品なのですが、思いっきりネタバレで書きますのでご注意を

 

真っ暗の中にナレーションが流れ(実はここでこの作品の重要な真相が語られている)、灯りが点くとそこは高校の演劇部。部員たちが「ロミオとジュリエット」の稽古をしている。

聖良ちゃん演じるのは彩。

ここで部員たちの個性が描かれる。ロミオ役の雄太とジュリエット役の彩が実際に恋人同士で、二人のキスシーンが話題となり、そして稽古が終わって解散。

 

暗転して彩のナレーション。数年後、彩と雄太が結婚している。だが、そこに不穏な雰囲気が流れ…。

再開する彩と元部員達。彩の元に雄太とジュリエットの結婚招待状という気味の悪い物が届き、その事について相談する。

そして、高校時代の回想シーンに違和感を覚え、あの場にもう一人いた事を思い出す彩。部室の片隅に誰かの存在感。

その人物について議論する部員たち。そこに雄太もやってきて、そして今まで登場しなかった女性「恵美」も現れる。

緊迫する舞台上。「恵美」が実は本当の彩で、聖良ちゃん演じる彩は実は本当は恵美だった事が明かされる。自分を彩だと思いこんでしまった悲劇。

 

一転、この後の回想シーンでは冒頭と同じ「ロミオとジュリエット」の稽古なのですが、本当の彩役として福富ゆきさんがジュリエットを演じています。聖良ちゃんは部室の片隅から二人を辛そうに見つめ、プロンプ役務めている恵美。

雄太の事が好きな恵美。彼に恋人がいるのが辛い。だからこそ二人がロミオとジュリエット役を演じる事に苦しむ。自分ならもっと上手くジュリエットを演じる事ができる。彩なんかよりも自分の方が。そういう想いがひしひしと伝わってきます。

 

暗転してまた現代に戻って。どうしても変えられない運命。気持ちが抑えきれず、ナイフを持ち出し雄太への想いに殉じる恵美。

 

ラストは智子と網代がやりきれない表情で会話して終幕。

 

ドタバタ感のある稽古シーンから始まって、観客の気持ちを掴んでから一転してミステリー感漂う不穏な空気。高校時代と成人後を交互に描く演出。

成人後もコミカルな会話が続きますが、これは真相を知っていたみんなが恵美の心を刺激しないように外堀から攻めていた事が繰り返し観ているとわかります。

コミカルとシリアス、喜劇と思わせて悲劇。冒頭で「ロミオとジュリエット」を最初は喜劇だったと語る事が、終幕後ずっと心に余韻を残しました。

繰り返し再演されている事が納得できる、とてもよくできた観応えのある作品だと思います。

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さて、聖良ちゃんの演じる恵美(彩)、実は上演前にロビーでもらえるチラシに役名が記載されているんですね(笑)。私、ネタバレだとは露ほども思わず、初回を観る前にこれで聖良ちゃんの役名をチェックしてしまいまして…。なので、冒頭の稽古シーンで「あれ…?」と違和感が。

 

全員が高校生と社会人の演じ分け。そして劇中劇としての「ロミオとジュリエット」を演じる3人。出演者にとって難しくて楽しくてやりがいのある舞台だったと思います。

 

聖良ちゃんはさらに高校生の時も彩と恵美の演じ分けもあって、ジュリエットも入れると実質5役なのですよね。

高校生彩の時の楽しそうな幸せそうな演技。明るくて。自分たちの事が話題になってるのを飲み物を口に含みながら「ん?」と気にしてる表情とか、バナナを食べてる時とかメッチャ可愛い。

成人彩の翳りのある不安そうな表情。

そして恵美。高校生の時の胸が張り裂けそうな演技。さっきまで彩として演じてた回想とのギャップが強い印象を訴えてきます。

聖良彩のジュリエットの演技が上手かった分(これも恵美自身が捏造した回想なので、実際の恵美の演技が上手いのかは不明なんですよね)、拙い福富彩のジュリエットの演技も演出上で重要ですね。これがあるから余計に恵美のやりきれなさに深みが加わります。

 

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私の観てきた限り、聖良ちゃんは真っ直ぐなキャラを演じてきた傾向にあるので、今作品の様な変化球…精神的に追い詰められてサイコ化、そして自殺という役は新鮮でした。本当に観て良かったと思える舞台でした。ファンとしての喜び。