『ホス探へようこそ ~ザ・セカンド/アンチ・アレス~』

記事を更新するのがかなり遅れてしまいました。ちょっと後半に作品に対して厳しい事も書いてます。ご了承ください。

 

山下聖良ちゃんの出演するミュージカル『ホス探へようこそ〜ザ・セカンド/アンチ・アレス〜』を観てきました。8月24日の初日と、26日ソワレ、28日の千秋楽で3回。場所は前作『ファースト』の時と同じ横浜のO-SITE。

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『ファースト』の続編としての2作目、次回公演の『サード』で原作部分は完結、今年2月の舞台オリジナルエピソード『The Last Valentine』の再演が予定されています。(当初は12月に予定されていた『サード』が延期で時期未定、来年2月の『The Last Valentine』も現時点ではどうなるかわかっていません。)

 

公演後ですので、今回も聖良ちゃんの演じた役についてのネタバレがありますのでご注意を。

 

サブタイトルに「アンチ・アレス」と付いていますが、これは今回から登場するライバル店。明智のライバルホストである黒月とその仲間のホストたちが一気に登場。冒頭から「明智の裏切り」「許さない」「宣戦布告」と重要な事をほのめかしてはいますが、実際には今回は顔見せに少し毛の生えた程度、ストーリー上で核心に触れてくるのは『サード』までおあづけになります。

 

 

オープニングで前回と同じく忍がレディー・キラーに加わるまでを描き、本編は今回も短編3本のオムニバスとなります。

1本目は前作でも少し話題に出た忍の実家の話、彼が実家を出た理由とその解決。

前作で華子さんを演じた田代さやかさんが忍の亡き実母の真美役(原作では登場しない舞台オリジナルですね。もちろん故人なので実体ではなく幽霊というか霊体という感じ)、同じく前作で理恵子さんを演じた山本美紀子さんが義母の響子役。

忍(行)が真美の残した謎を解明し、響子との関係性の回復という流れ。

このパートはタンゴや子守唄などミュージカル要素も印象に残ります。

 

 

2本目は明智の妹で高校教師の優奈が登場、演じるのは『The Last Valentine』でも出演していた河東杏樹さん。明智とお互いにシスコンブラコンという関係なのですが、その辺も含めて描写不足で、『セカンド』の主要女性キャラの中では一番印象が薄くなってしまった感があります。このキャラは『サード』でも登場するので挽回に期待したいところです。

そして優奈が探しているのが行方不明となった女生徒の平口美奈子ちゃん。聖良ちゃんが今回演じるのはこの美奈子ちゃんです。

地味な女子高生の美奈子ちゃんが街中で自分を褒めてくれたアンチ・アレスのホスト榊にのぼせ上がってしまい、けれど未成年なのでホストクラブには通えない、その想いを榊に利用され、知らずに覚せい剤の売人にされてしまうという流れ。

公表されている美奈子ちゃんのビジュアルは制服におさげ眼鏡という地味な姿なのですが、実際にはオープニングと写真画像でしかその姿は登場せず(カーテンコールでは眼鏡なし制服)、本編では素性を隠してラーメン屋でバイトしてるため私服の上に調理白衣にバンダナで眼鏡なしという姿。公式ビジュアルはフェイクだったわけですね。これに関しては原作を読んでいれば予想できるのですが。

 

さて、美奈子ちゃん。ぶっちゃけるとキャラの印象としては『ファースト』のユキちゃんに負けると思います。今回は持ち歌もありませんし。情念や行動の面からも薄い。

その一方で、ラーメン屋バイトでの生き生きとした演技、真相を突きつけられて退場するまでの刻々と変化する表情の妙。そうした部分がユキちゃんと比較してかなりはっきりと出ていたと思います。実際に聖良ちゃんの事を言及している感想ツイートなどを幾つか目にしましたが、表情の良さを挙げている人が何人もいましたね。

そうでしょう、そうでしょう。聖良ちゃんのファンになった初期から私は彼女の表情の演技の素晴らしさを主張していますが、やっぱりその魅力は伝わるんですよね。

表情だけではなく、舞台上での立ち回りとか指先もなかなかに細かい演技をしていて役へのこだわりを感じました。

キャラの印象が薄いというのは動機づけの説明がセリフとそれに合わせた美奈子ちゃんの表情だけで表現されているからで、ここをしっかり回想シーンで再現して描き込んでいたらまた違ったのでしょうけど。ただそれには場面転換と衣装着替えが必要なので演出も難しいのかもしれません。

 

そして3本目。時雨の固定客であるゴス系の客たち。その中で唯一名前が明らかになっている麻耶を演じるのは『ファースト』でもえ役だった真島なおみさん。その仲間のゴス客たちは役名はありませんが女性キャスト全員で演じています。

このパートは序盤から時雨の元に続けて送られてきた3枚のタロットカードの謎解き。その真相である麻耶の婚姻&懐妊祝いのパーティ。ゴス客たちによるドール的なダンス、榊役の石田達成さんがこちらではピエロ役として登場してマジック系のパフォーマンスを披露、かなり観応えのある派手なパートでした。

聖良ちゃんはここでは目元をマスクで隠し、ステッキを持った女性役。セリフこそ無いものの、仲間やホストとの絡み、ホワイトレディを美味しそうに飲み干す姿(ホワイトレディは度数も高いカクテルなので、あれを一気飲みできるなんてどれだけ酒豪なのかとw)、ステッキを振って曲スタートのきっかけ役、ピエロに対してのリアクションなどかなりあちこちで目立ってましたね。ゴス客全員による「タロットカードPart2」という曲では1フレーズが聖良ちゃん担当でした。そしてもちろんダンス。

正直言ってファンとしての新しい発見性としては美奈子ちゃん役よりもこちらのパートの方が比重が大きかったとも思えます。

聖良ちゃんは背も高めでスラッとスタイルも良いのでこういうゴス服が見栄えしますね。しかも不思議ちゃんっぽい雰囲気も出ていて、とても良かったです。

 

アフターイベントとしてはトーク&ソングショーこそ観られませんでしたが、初日舞台挨拶&撮影会、握手会、千秋楽挨拶で聖良ちゃんを堪能しました。特に千秋楽挨拶で感じたのですが、他のキャストさんのコメント時にもけっこう反応して表情コロコロ変わったり身体が動いてたり隣の山本美紀子さんとちょこちょこ会話してたり、ながめてて楽しかったです。素の時のリアクションやアドリブ面の柔軟性なんかも魅力なんですよね。なかなかそれを観られる機会も限られているんですが。

 

 

 

 

『ホス探へようこそ〜ザ・セカンド/アンチ・アレス〜』、正直言いますと私はあまり出来の良い舞台作品だとは思いませんでした。

追加された楽曲は良かったと思います。

随時タロットカードを投入した事で全体的な筋ができてはいましたが、結局のところは短編3本が独立してしまった構成。サブタイトルにも掲げられたアンチ・アレスの面々も美奈子ちゃんの事件にこそ間接的には関わってきましたが顔見せで終わってしまった感。黒月役の林野さんはとても存在感あってレディーキラー側の主役たちを食ってしまうほどの迫力があったんですけどね。

 

 

あとは、これ、私の好みから外れただけという事なんでしょうけど、演出面でなんとなくダメでした。まず、過去の戻る演出。場面転換ではなく時間を巻き戻す演出をしているところ。(聖良ちゃんのクルクル回る姿を観れたのは美味しかったですが)それの条件がアドリブというかホスト役のキャストさんによる一発芸ってところ。

その辺りでキャストさんの素の面が出てきてる点。時雨のキャラもやりすぎ感がありました。竜胆の「にゃん」にも抵抗感。乙洲のゴスとヴィジュアル系の違いのくだりもちょっと。

まあね、メイン客層(男性キャストファンの女性客)が楽しんでいるならそれが最適解なので私の受けた印象からの感想は雑音なのでしょうけれど。

観客の笑いを誘う場面も多くはそういう感じでほとんど男性キャストでしたし(女性キャストでは真美さんとゴス娘たちでちょっとあったくらい)、そういう作劇なんだというのは理解してます。

実際、作風としては『ファースト』と比較してもかなりエンタメ方向に振ってきてましたし、観客を楽しませようという意気込みは感じました。

私の好みとしての演劇は、キャストさんにはきっちり役を演じきってほしい、そのための役作りにこだわってほしいので、キャストさん自身が役を超えて前面に出てしまったりメタな演出は抵抗あるのです。同じような理由で、客席いじりとか、観客側も曲に合わせて一緒に手振りするというのは私が演劇に求めてる物とは違うなと(私もちゃんと振ったけど)。役の上でアイドルという設定で、ライブを舞台上で再現という演出ならまた話は別なんですけど、ホストはアイドルじゃないしライブ開催してるわけでもないからなあ。現実のホストクラブに行った事ないから、実際にそういうステージイベントやってるかどうかも知らないで言ってますけど。

アフターイベントを充実させるってのもリピーターを増やす手段としてなんだろうけど、ソングショーとかは違う気がするんですよね(聖良ちゃん出演なら観たいけどさ)。稽古は全力で臨んでいるのでしょうけど、アフターと分散している配分を本編に全部注いでほしいですし、その分で本編の脚本の密度を濃くしてほしかったなと。

でも、こういうのって2.5次元系の舞台ではよくあるパターンみたいなんですよね。だからそういう物なんだろうなと受け入れてはいるのですが。好みか否かってのはやっぱり大きいので、続編に聖良ちゃんが出演しない場合は私は観に行く事は無いだろうなと。

2.5次元系舞台って、小耳に挟んだ話では今年だけで100タイトル以上あるらしいですし、興行的にも観客のキャパを超えてしまってるようにも思えるのですよね。一部の有力タイトルだけが成功して、多くのタイトルは綱渡り状態。

演劇に歌にダンスにと美味しいとこ取りに思えて、実質はそれぞれに特化した舞台に比べればどうしても見劣りしてしまう感があって。いろいろ詰め込んだ分、それぞれのレベルが中途半端に感じてしまいました。(規模の違いもありますから単純に比較はできませんが、私個人の舞台作品としての評価は『雪の女王』の方が上です)

『ホス探 サード』もどういう理由で公演延期になったかは想像の域を出ませんが、公演を継続していくのは難しいのかなと。

『ファースト』の時と比べて本編以外でも、アンケート用紙を用意したりパンフの内容や文字が良くなったり改善されている点も幾つかあって運営側も続ける気はあったのでしょうけどね。結局のところ観客を動員できなければ興行は維持できないですからね。

『サード』に聖良ちゃんが続投するなら深雪というキャラが美味しい役で、ぜひ彼女に演じてほしいと思っていたので期待してたのですが。(仮に1月に『サード』があるとしたら『プリパラ』があるから聖良ちゃんは無理だし…)

聖良ちゃん本人はこの作品を好きだというのはものすごく伝わってくるので続投できるなら応援したいのですけどね、どうなんでしょう。

 

 

 

 

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さて。美奈子ちゃん。右側の大きいのがパンフ。左側下、左と真ん中がチケット予約ランダム特典(ロゴありと無しの2パターン)、右の横向きがリピーター特典3回分。それより上の8枚が販売ブロマイド4枚セット×2種。右側の小さいサイズはトレカ2種(34種ランダム)とレア封入(聞いた話では公演各回でキャストさん1人1枚封入されたとか。つまり聖良ちゃん全8枚中5枚を私が集めちゃった事に)のサイン入りです。

実は予約ランダムもトレカも私自身では1枚も出してません。『ファースト』の時に面識のあった方が私が聖良ちゃんファンだという事を憶えてくれていたり、他のキャストさんファンの皆さんに声をかけていただいてご好意で譲っていただけました。本当にありがとうございました。

 

そう言えば、このブロマイドなどでキャストさんたちはタロットカードを持っているのだけど聖良ちゃんは「Strength(力)」、これって聖良ちゃん自身が選んだのかどうなのか? 何か意味が込められているのか? 握手会の時にでも本人に聞いてみればよかった。

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こちらは響子さん。聖良ちゃんと同じ劇団ひまわり組の山本美紀子さん。予約ランダム特典のロゴありと無し、1枚は交換、1枚は自分で。サイン入りトレカも自分で引き当てました。彼女は来年1月のミュージカル『プリパラ』でも聖良ちゃんと共演されますね。

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今回も聖良ちゃん宛てにスタンド花を贈らせていただきました。

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そして今回も花の宛名札にメッセージを書いていただいてました。ありがとうございます。