「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説THE MOVIE」


レビュー、遅れましたが、先週の金曜に観てきました。
配給がワーナー扱いになって、世界市場を狙っているのかと思う反面、上映館が少なく、住んでいる地域によっては観に行くのが一苦労かもしれません。『4兄弟』の時には川口のMOVIXにまでダンディ4が舞台挨拶に来てくれた程だったんですがね。観たい子供が観れる箱数は用意して欲しいところなんですが。
ちなみに、私の行ったのは浦和のユナイテッド・シネマでした。


物語の世界観、時系列は『大怪獣バトル』の少し後。宇宙中でマイナスエネルギーが増大し、怪獣たちが暴れだす。そんな中、宇宙牢獄に幽閉されていた悪のウルトラマン、ベリアルがニセウルトラマンザラブ星人によって解き放たれてしまう。ギガバトルナイザーを手にしたベリアルはM78星雲の光の国を襲撃。迎撃に向かうも次々に倒されてしまうウルトラ戦士たち。そして、とうとうベリアルにプラズマスパーク・コアを奪われ、太陽エネルギーを失った光の国は急激に熱を失い、ウルトラ戦士たちは凍結してしまう。バリアで寒気を免れたマンとセブン、ベリアルの攻撃で大気圏外に飛ばされていたメビウス。レイブラッド星人の力を受け継ぐ地球人レイ、別の宇宙から現われたダイナ、そして強大な力を秘めた若い戦士ゼロ。
ベリアルを追って辿り着いた怪獣墓場で、蘇った100体の怪獣たちがウルトラの前に立ち塞がる…。


全体の構成としては、とにかくヤマ、ヤマ、ヤマの連続。とにかく細かい理屈は抜きでアクションとバトルを次々に魅せていきます。お子様目線からすれば、退屈なシーンはほとんど無かったんじゃないかと思います。
特徴的なのは重力に縛られていないロケーションが多く、ワイヤーアクションを多用した立体的なバトルになっている事。従来のウルトラバトルや、『ネクスト』以降のCG多用の「板野サーカス」的なバトルとも事なり、とても新鮮な映像でした。
光の国は、過去の回想シーン…若き日の父と母とゾフィーの描写や、これでもかと画面に出てくるウルトラ戦士たちに、第2期とコロコロの『ザ・ウルトラマン』で洗礼を受けた私なんかはワクワク物でした。
レギュラー的なウルトラ兄弟以外に、スーツの質感の違うグレートや、デザインに違和感のあるパワード、まさかのUSA組、マックス&ゼノン、『ウルころ』のボーイまでいました。ナイスは確認できなかったけどいたのかな? たぶん、ジョーニアス系、ゼアス、ティガ、ガイア系、コスモス系、プロジェクトN系は世界観の違いから出演無しですね。いや、それだったらパワードやマックスも不自然なんだけど。コスモスは人間態のムサシだけ出演。
まぁ、豪華なオールスター出演でも、ベリアルの前には紙の様に飛ばされる雑魚扱いでしたが。
これは怪獣側にも言えて、ゼットンバードンアントラー、キングジョータイラント…とウルトラの命が危険なレベルの怪獣たちも、再生怪獣の前例に従い、戦力比以外の脅威を感じさせず瞬殺。この辺は少し悲しかったですな。
それと、ゾフィーや父まで圧倒する強さを持つベリアルを、さらに上回るゼロ。このパワーバランスもどうかなと。

まぁ、ゼロというキャラクターは良かったですよ。セブンの息子として青が混ざっているデザインはどうなのよ?とか、思いっきり悪人顔だとか…セブンやタロウの様に黒目が入っていれば表情も柔らかくなったと思いますけど。
言葉使いも荒々しくてウルトラ戦士的では無いですね。声優はセツナやオカリンの宮野真守さん。頭部の対になったスラッガーは角度によってはレオに似た印象を見せる。これはレオの弟子という事も意識したデザインかも。スラッガーを両手に持って怪獣たちを次々に切り裂いていくアクションは、忍者のクナイ二刀流っぽくて良い。
いやぁ、カッコ良かったですよ。他のウルトラ戦士とのバランスが釣り合っていないんですけどね。
彼を主役にしたスピンアウト作品もアリなんじゃないでしょうか。

一方で、キング&母の声は違和感あるにも程がある。キングは清川元夢さん、母は池田昌子さん一択だろう、常考
話題性を求めるのは良いが、せめてキャラクターに重みを持たせられる配役にしてほしい。ベリアルの宮迫博之さん&レイブラッド星人の蝶野正洋さんがかなりハマッていただけに、この2人だけ極端に演技がレベルダウンしていると感じたよ。
悪のウルトラマンというポジションのベリアル。本来は普通のウルトラ族だったのだけど、プラズマスパークの強大なエネルギーに魅せられ、我を失い、その力を自分だけの物にしようとしてしまう。もちろん、そんな事をすれば光の国は滅びる。それでも自分の欲望を押さえられず、結果は犯罪者としてウルトラ戦士たちに追われ、レイブラッド星人と融合を果してしまう。
実は、ゼロも同じ道を歩もうとした。直前でセブンに止められ未遂で終わったのだが。その後、精神の更生の意味も含めてレオの下で修業を積む事になる。
この展開は基本的にジェダイとシスだね。ゼロが堕ちていたら、ベリアル以上の凶敵となっていたでしょう。

さて、ダイナに関して。つるの剛士さん本人が出演してくれた事は、とてもうれしい。けど、体格が少し丸みを帯びた事はともかくとして、金髪とピアスはアスカじゃないよなぁ…。
TV版の最終回、遥か未知なる宇宙に飛ばされ、仲間たちの元へ帰ってこなかったアスカ。あれからこちらでは10年。その後、映像作品に登場したダイナは、時系列的に前だったり、別の宇宙の別人だったり。TV版の、本物の、あのアスカとダイナは今作でようやく復活した事になる。良かった…まだ無事でいてくれたんだ。「光」になってしまった可能性も捨てきれないだけに、今でもアスカという人間としての実体を持っていた事がハッキリしただけでもうれしい。
まぁ、光の国のウルトラマンと邂逅し、ウルトラ兄弟の一人として認められたとしても、アスカはこれからも故郷への遠い旅を続ける事になるのですが。


TVシリーズの『大怪獣バトル』は全く観ていなかったのですが、それでも十分に楽しめました。前作の『8兄弟』でウルトラの映画は打ち止めだと思っていただけに、変化球的ではありましたが、とても満足の出来る作品でした。
ただ、アーケードのDCD版『大怪獣バトル』は収益を上げている様ですが、子供たちのウルトラ人気って、そう高くは無いと思うんですよね。ウルトラも、戦隊も…ヒーロー作品自体比較する程現行作品は多く無いのですが、巨大バトルがあるだけで一つランクが下に、幼稚なイメージに捉えられてしまうんですかね。
何にしても、ウルトラは、過去の遺産を大事に守って作品を重ねていっていると感じる部分が少しはありますので、頑張って良い作品を作っていってほしいですね。