「Dr.パルナサスの鏡」


観に行ってきました。『未来世紀ブラジル』のテリー・ギリアム監督の最新作です。
ダークナイト』でジョーカーを演じたヒース・レジャー最後の出演作。この作品の撮影中に彼が急逝してしまったため、危うく製作中止となりかけたのですが、ジョニー・デップジュード・ロウコリン・ファレルの3人がヒースの代役を果して完成した作品です。


パルナサス老人はかつて偉大な僧侶でした。彼は悪魔ニックと契約し、不死の身体を手に入れます。その代償として下界に下り、人々を鏡の世界に導く事になります。鏡の世界は入り込んだ者の心を写し、そこで選択を迫られます。正しい節度ある選択をした場合はパルナサスの勝ち、間違った怠惰な選択をした場合は悪魔ニックの勝ち。
そうした実験を延々と繰り返し続けたある日、パルナサスは一人の女性に恋をします。そして新しい契約。若返り、その女性と結ばれた代償。その女性との間に生まれた娘、ヴァレンティーナが16歳になった時に、彼女をニックに引き渡し、パルナサス自身も死ぬという物。その期限が迫った時、ニックは再び賭けを持ちかけます。娘の誕生日までにパルナサスが5人獲得できれば契約は無効にすると。
今まで大道芸の形を借りて人々を集めていたパルナサスでしたが、ここ最近は人々も関心を示さず結果を出せていません。そんな時、タロットで引いた「吊られた男」に符合した男、トニーを娘たちが救出し、彼が一座に加わるのですが…という物語です。


上映が終わった直後の周囲の声は「わかんねぇー」という感想が大半でした。う〜ん、それほど難解でも無いと思うんですけどね。
基本的な設定は「ファウスト博士とメフィストフェレス」じゃないですか。物語の基幹はシンプルですよ。
判りにくい部分ってのは鏡の世界の描写ですかね。でも、これも当事者の精神世界を反映した物ですし。ニックが蛇になる=「楽園の蛇」を暗喩している、ってのが普通の日本人にはピンと来ないかもしれませんが、それ以外は難しく考える事でも無いよなぁ。少なくとも『不思議の国のアリス』よりはよっぽどストレートですよ。ギリアム作品の中でも理解しやすい方だと思いますよ、うん。何て言うか、「わからない」状態で思考停止しちゃってるんじゃないでしょうかね。自分なりに考えるから物語は面白いんでしょうに。


作品の世界観、ビジュアル面は、ギリアム監督ならではの適度に狂った、センスのある美しい世界で彩られています。もう、この映像を堪能するだけでも楽しかったですね。
俳優陣も、主要キャラはみんな良かった。役者としてのヒースは、ホントにもったいないと思いますね。まぁ、この作品では演技の幅も限られてしまっているので、それ程魅力が発揮されているとは言えないのですが。全て彼が演じていたら、ジョーカー以上に記憶に残る役になったのではないかと。生きていて、もしさらなる経験を重ねられていたら…惜しいです。
で、代役の3人も誰も彼もが素晴らしかった。ジョニデに関しては出番も短いのですが、その場面がヒースの事を暗示しているような所でしたから。微妙に変化する表情が良かったです。一番おいしかったのはコリン・ファレルですね。一番トニーのキャラが一変する展開ですから。
ヴァレンティーナ役のリリー・コレルも、むっちゃ可愛いな。


う〜ん。しかし、語りたい部分は思いっきりネタバレ炸裂な部分か、あるいは実際に映像を観てない人には説明しにくい部分ばかりなんだよね。
でも、この作品。人を選びます。ヒースの遺作とか、ジョニデが出ているとかの話題性で一般女性への訴求力は高いと思いますが、むしろマニア好みな監督ですからね。「スマステ」の「月イチゴロー!」でも『アバター』、『パブリック・エネミーズ』、『スノープリンス』に負けて4位でしたし。
まぁ、この作品に向いた人はキッチリと高い評価をするんでしょうし、そうでない人には合わなかったんでしょう。
ちなみに、私の評価は10点満点で8.5点です。DVD購入決定ですよ。って言うか、もう一度リピート観賞したいくらいです。


ところで、上映前に『シャーロック・ホームズ』の予告が流れました。監督は『スナッチ』のガイ・リッチー。主演のホームズは、私のお気に入りであるロバート・ダウニーJr.。ワトソンにジュード・ロウ。いや、本来のイメージ的には逆の方がいいんじゃないかと。思いっきり肉体労働系っぽいホームズになってたし。
で、注目はアイリーン・アドラーですよ。この人気キャラを演じるのが『消されたヘッドライン』でラッセル・クロウのパートナーを演じたレイチェル・マクアダムス。『消されたヘッドライン』のパンフでアイリーン・アドラー役を知ってから期待してました。動く姿を観て、なかなかイメージに近い感じでした。これは楽しみですなぁ。