『ロミオとジュリエット』

f:id:dyna_red:20181007065356j:plain

山下聖良ちゃんの出演する舞台、『ロミオとジュリエット』を観てきました。場所はおなじみシアター代官山。9月19日のマチネC、ソワレA、23日のマチネA、ソワレDの計4回。昨年の同じ頃に観に行った『十二夜』に続いて、新潟のシェイクスピアカンパニーと東京のひまわりの合同による公演第2弾という感じですね。全席自由席。最前中央1回、最前下手側2回、2列目下手側1回で観る事ができました。

 

f:id:dyna_red:20181007065344j:plain

f:id:dyna_red:20181007070234j:plain



 

 

ロミオとジュリエット』、まあ有名な作品ですよね。たぶんごく一般的な日本人にとってはシェイクスピアの中で一番知られてる作品なんじゃないでしょうか。なので、あらすじについては割愛します。

でも私が普通の『ロミジュリ』をちゃんと観たのって、オリヴィア・ハッセーがジュリエットを演じた古い映画くらいで。あとは現代に置き換えたレオナルド・ディカプリオの映画とか、かなりアレンジ加えた『ウエストサイド物語』とか、あとはファンタジー作品に変えたアニメとか。どれかのミュージカルを映像で少し観たくらいですかね。

有名なセリフも「おおロミオ、あなたはどうしてロミオなの?」は当然知ってましたが、他の印象的なセリフは以前に聖良ちゃんが出演した『Juliet』でおぼえたくらいで。そんな事もあって、作品としてとても新鮮に観る事ができました。

 

 

意外だったのは、かなり性的な表現があったなと。特にマキューシオの言動に顕著でしたが、なかなかにきわどく、当時の娯楽としてそういう物の需要があったんだなと。

それから会話のテンポがとても良く、韻を繰り返し踏んだり、言葉遊びで会話を連鎖させていったり、ミュージカルではないはずなのに音楽性を強く感じました。そういうところがシェイクスピア作品の魅力なのかもしれないですね。

 

聖良ちゃんはAチームではジュリエット、CDチームではモンタギュー夫人を演じていました。

他のキャストが一様に黒づくめな衣装の中、ジュリエットだけが真っ赤な上着で舞台上で華やかに映えています。13歳という設定もあってか、初登場の場面では幼さ無邪気さも伝わってくる可愛らしいお嬢様感。パーティーでパリス伯爵と踊る時の優雅さ綺麗さ。そしてロミオと出会い恋に落ちてからの演劇的激情的に変わっていく様。喜びと感情の爆発とためらいと絶望と。この内面の揺れ動きを表現した演技の推移、とても素晴らしかったです。特に物語が悲劇性を帯びてくる後半のジュリエットは、今まで聖良ちゃんが育ててきた物が一気に実を結び惜しげもなく披露されている、そんな印象でした。

難しい役ですし、セリフ量も尋常じゃなく多いですし、高い場所に立つ事も多いですし、課題も多く大変な役だったなと思います。聖良ちゃんの女優人生の中で、今このタイミングで、このジュリエットを演じ切ったという事はとても大きな区切りになると思います。ここからさらにどこに進むのか、どれだけ演技の幅を拡げていけるのか。本当に楽しみです。だって、ここはまだ通過点なんですから。

 

そうそう、CDチームでのジュリエットは以前に『御手洗さん』『十二夜』『モガリノミヤ』などで観ている永瀬千裕さん。聖良ちゃんと比較しても圧巻のジュリエットでした。聖良ちゃんは演技のあちこちに手探り感も見える気がするのですが、千裕さんは全くブレを感じませんでした。あと、先述した様に聖良ちゃんは感情が大きく揺れ動いた時に印象強く残ったのですが、千裕さんの方は明るく楽しそうな場面の何気無い表情1つ1つの方がより印象に残ったという感じでした。千裕さんと聖良ちゃんの、ベテランと中堅とのキャリアの差ってのは、そういうところに出てくるんだろうなと。

 

で、CDチームの聖良ちゃんはモンタギュー夫人。ロミオの母。キャピュレット夫人と比べると出番も限られていて影は薄い役です。凛として綺麗な挙動と表情。ロミオの追放を宣告された場面、Aチームのモンタギュー夫人がはっきり感情を露わにしていたのと違って、聖良ちゃんの夫人は崩れ落ちる時も感情を表に出さずに耐えている感じでしたね。こういうちょっとしたところでも違いが見えてくるから別班も合わせて観るのは面白いです。

 

 

Aチームのロミオ、聖良ジュリエットの相手役は栗原大河さんでした。1つ前に聖良ちゃんが出演した『火消哀歌』でも特に絡みは無かったですが共演されていた方。

線が細く柔らかい印象、十代の若さを生き急いでいる疾走感と儚さ。ジュリエットに主導権を握られている様な巻き込まれ感。そういったロミオで、聖良ジュリエットにとてもお似合いだったと思います。ロミオも登場場面やセリフももちろん多く、難しい役だと思いますが、おそらく自身の感性を総動員して精一杯にロミオに生命を吹き込んでいるのだなと感じました。

 

 

一方でCDチームのロミオ。なんと、演出の栗田芳宏さん。『十二夜』の時にサー・トービー役を演じていて強い印象を刻んだ方。61歳との事。グレーの髭と髪があまりにもロミオのイメージと違う。でも、観ているうちに違和感は無くなって自然にロミオとして受け入れてしまっていました。やはりそこはしっかりとした演技力に裏打ちされた説得力なんでしょう。これもありかなと。ただ、儚さのある栗原ロミオとは違って、自信に満ちた強キャラという印象です。ティボルトを殺してしまった時の表情は、まさに鬼でした。そんな栗田ロミオが千裕ジュリエットに翻弄されるのも観応えがあって楽しかったですね。

 

ABチームで大公、CDチームでモンタギュー氏を演じていた佐戸彰悟さんも良かったです。この方はユニフェスや『さんしょう太夫』や『十二夜』で観ているのですが、目力と迫力、声の張りがあって短い出演場面ながらとても存在感がありました。また何かしらで観てみたいなと思わせてくれる役者さんでした。

 

出演者の皆さん、ベテランから若手まで総じて素晴らしい演技を観せていただいて、とても有意義で価値のある観劇だったなと。また来年もシェイクスピア作品を上演してもらえるならぜひ、聖良ちゃんの出演の有無に限らず観に行きたいと思います。

 

f:id:dyna_red:20181007065347j:plain

f:id:dyna_red:20181007065353j:plain

今回も聖良ちゃん宛てにお花を贈らせていただきました。

実は『マーダーケース』の時に贈ったアレンジメントと同じオーダーです。白とピンクのハート型。ジュリエットの乙女性に似合っているかなと思いまして。聖良ちゃんに喜んでいただけたのはもちろん、他のお客さんにも「良かった」「可愛い」と思っていただけたっぽいのをツイッターで見かけまして、私としてもこれにして良かったなと。

 

当初はスタンド花を考えていたのですが、運営側からサイズ指定がありまして。それに則ると私がよく使ってる業者さんだとサイズオーバーしてしまい、他に良い業者さんを探しきれなかったのと、サイズ制限かかる事でのボリューム不足を懸念したので今回はあきらめました。まあ、実際には多少サイズオーバーしたところで普通に許容されたっぽいのですが。

 

で、今回も宛名札に聖良ちゃんからお礼を書いていただけてました。ありがとうございました。