「私の中のあなた」


今回観てきたのは、この作品。セブンイレブンの店頭なんかにも、キャメロン・ディアスが笑っているポスターが掲示されていたりしますので、タイトルくらいは知っている人も多いかも。


物語はこんな感じ。少女ケイトは2才の時に白血病を発症する。両親も弟もドナーとして適合しない。そこで担当医が提示した方法は、ドナーとして完全に適合した子供を遺伝子操作で創る事。そうして生まれてきたのがアナだった。彼女は誕生直後の臍帯血を始め、11年の間、ドナーとして姉に提供し続けてきたのだ。
そして、ケイトの腎不全が悪化し、腎臓の1つを移植する事が具体化してきた時、アナは辣腕弁護士を通し、両親を訴えるのだ。腎臓を提供すれば、これからのアナの生活は多くの制限を受けてしまうから。


ネタバレ的な事は回避しますが、ケイトの周囲はいい人ばかりだったなぁと。アナもケイトの事がホントに好きで、献身的に姉の世話をしている事がキッチリ描写されているし、ケイトは自分の病状に苦しみながらも、周囲の人を暗くさせないために、笑顔を絶やさないでいる。
両親や弟からの視点に切り替わったり、時系列が多少前後する事で全体的な構成が少し解りにくくはなっていますけど、その演出が、ケイトを取り巻く家族の絆と想いを掘り下げていっている。
私が一番ジーンと心に来たのは、ケイトの彼氏テイラーのエピ。いや、お約束の展開だとは思うんですけどね。後はスクラップブックという小道具の使い方ですね。


ケイト役の子は髪を剃って、眉も剃って、病状に合わせてメイクもして、鼻血にまみれて、何度も嘔吐して。日本だったら、ここまで体当たりの役作りはしないもんなぁ。こういう部分で観客に訴えかけてくるレベルに差が生じるんだと思う。


で、劇場内では泣いているらしき気配もあちこちからしましたけど、私は泣くまでは至りませんでした。『HACHI』でも泣いたのにね。
思うに、泣かそうという「あざとさ」をちりばめて撮られた作品では無いからだと思うのです。
白血病で死ぬから悲しいなんて単純なテーマでは無く。自分の命の短さを受け入れ、その上で残された家族の事を第一に考えるケイト。腎臓提供を拒否する事が姉の死を意味する事を理解し、それでも姉を愛するアナ。そして深い絆でつながった家族たち。明るいシーンが多かったのも印象的でしたね。
観る前は「創られた子供」としてのアナが柱だと思っていたのですが、実際には「延命治療」がテーマでした。
ドナーカードとか臓器移植ネットとか移植手術募金とか、そうしたモノとは方向性が真逆ですな。普及キャンペーンにはなりません。


私の評価は10点満点で8点です。単純に泣きたい人にはオススメしませんが、良い作品でした。ケイトとアナ役の2人の少女がとても良かったですね。キャメロン・ディアスも悪くは無かったけれど、この2人の魅力は圧倒的でした。